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From the clifftop

憧れのアルティショウ~ショーラパンでディナーvol.2~

前回の、ショーラパンディナーの続きです。


結構急に予約の電話を入れたのですが、鈴木さんはその時「イタリアのアーティーチョークを仕入れておきますね。」とおっしゃって下さって、実はそれがものすごく楽しみだった私。
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帆立貝柱のグリル、アルガンオイルとレタスのクリームソースで。エリンギの軸のように見える、左上のものがアーティーチョークです。ちょっとほろ苦いようなお味。

アーティーチョークは私の憧れのフランスそのものです。それは随分以前に下記の文章で知りました。


 昼、シャンゼリゼエのマドリガルというレストランで、テヴナンさんと本郷さんと三人で食事をする。厚ぼったい緑色の、形はちょうど蓮の花のようなもので、一枚ずつその花びらを剥がして、ちょっとソースをつけて根元のところだけたべてゆく。だんだん裸になってあとは平べったいシンが残り、これをナイフで切ってたべるのでとてもおいしい。私はこれが大好きになってすぐにアルティショウ(朝鮮薊)をたべるというので、テヴナンさんは私のことを、マドモアゼル・アルティショウ、またはムスメ、またはマドモアゼル・ソレイユ(私の名がヒデ子だから)と呼ぶ。おばあちゃんは私をネコ(フランス語で高峰秀子は、とても小さな高価な猫という意味だそうで……)、またはプーペ(お人形)と呼ぶ。

                      高峰秀子著『つづりかた巴里』 角川文庫より









いつ買ったのかも忘れてしまった古い本ですが、高峰秀子さんがフランスに滞在されたのは昭和26年頃で、まだ松山善三さんとのご結婚前。これは滞在中に書かれたものか帰国直後にまとめられたものでしょうか。どちらにしても随分と以前のものです。半年余りを過ごした高峰秀子さんが綴る巴里の飾らない顔、そしてその街で過ごす彼女の安らぎや驚きやそこはかとなく漂う寂しさ。何度も読み返したせいか、私の中のフランスのイメージは彼女の文章に書かれたそれのような気がします。そして今、平成の世になって、横浜で、私が『これが、あの大女優さんの好物…』と感動しながら生まれて初めて頂いた、あの本の中に出てきたアルティショウ。私たちが食べたのは上の文章でいうと『平べったいシン』の部分です。鈴木さんに伺ったら実物を見せてくださって、大きさといい形といい(不穏当だったたごめんなさい→)手榴弾のよう。私が読んだ文章の中のアルティショウはそれよりもっともっと大きいものなのだそう。


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帆立にかかっていたアルガンオイルのボトルも見せてくださいました。鈴木さんがフランスから持ち帰ったものだそうです。さらりとして全くクセが無いオイル。化粧品としても珍重されているものなのですって。

そういえば今回はスープの打ち合わせをしなかったなぁ…と思っていたら、
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そうでした、プロヴァンスでしたね!という訳でブイヤベース登場。
惜しみなくサフランを使ったスープの香りの好いこと。エビの甘いこと。魚の身はふっくら。鈴木さんが特製アイオリソースを出してくれました。もちろんブイヤベースだけでも美味しいのですが、このアイオリソースを加えると信じられないような美味にまたなるのです。美味しい・良い鰻屋は添えられる漬物がやたら旨いとか、同じく美味しい・良い蕎麦屋はちゃんと本物の山葵を摩り下ろして出してくれる みたいな感じでしょうか、あのアイオリソースは印象的でした。

しかしスープといえどもジャガイモ入りのブイヤベースですよ。この後伊勢海老が来ると判っていたのですがもうお腹の隙間がないっ。

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ここであえなく「参りました」宣言をした私です。出来立ての、尾の部分を一切れ切って味を見たところでギヴアップでした。ごめんなさい、鈴木さん。いくらお持ち帰り可とはいえ作り手としたら出来立てを食べてもらいたいですよね。ちびすけもあえなくここまで。夫は「かぼちゃがものすごく美味しい」などと言いながら全部平らげていました。そう、ショーラパンでいつも思うのは、鈴木さんの技やさまざまな食材の組み合わせが素晴らしいのはもちろんですが、その素材の基本の味がとても良い。厳しいシェフの目にかなった素材そのものの味がくっきり際立つんですね。添えてある野菜ひとつにしても『そう、かぼちゃってこういう味、人参の甘さはこういうもの!』といつも感じるのです。

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ちびすけが絶対食べたかったプリンと、桃のコンポート。桃はロゼワインで煮てあります。デザートは別腹法則に則ってこれはしっかり頂きました。しかしちびすけはかわいそうにその法則も今回は無理!状態だったので図々しい私たちはちびすけのプリンもしっかりラップと輪ゴムで止めてもらい、持ち帰らせて頂きました。(というわけで目下我が家にはラパンのプリン型が。早く返しに行かなくっちゃ と私には絶好のランチの口実があるわけでして…ふふふふふ)

ちなみに鈴木さんは「プロヴァンスの二匹目のドジョウを狙おうかな…なんて。10月頃に今度はノルマンディーで何かしようかなと思っています。」との事でした。もう何も入りそうにありません!というお腹なのにそんなお話を聞いてうわー、じゃ、りんごですかぁー?などとまたまた卑しさ丸出しの私。その時のお話ではメインのディッシュを羊にするか豚にするか迷うところ とおっしゃっていました。秋に向けて、また楽しみが増えました。(個人的にはラムがいいなあ。。。)
by sur-lie | 2008-08-28 15:34 | 食べましょうよ
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崖の上(っぷち)の暮らしもいとをかし  

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