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From the clifftop

今 生きることを

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吹き抜けのロビーに高く伸びたベンジャミン。こんなに大きく伸びる木だとは知らなかった。

どこかのレストランのようにも見えるここは、築地・国立ガンセンター中央病院のロビー。
最近読んでいた本が奇しくも木村梢著『功大好き-俳優木村功の生と死と』とエリザベス・キューブラー・ロス著『ライフ・レッスン』だった私。夫の学生時代の友人・Tさんのがん再発の知らせを聞き、なんともやるせない気分になりながらこういうこともシンクロニシティというのだろうか と考えた。Tさんは木村功さんと同じ食道がんだと聞いていたから。

久しぶりに会ったTさんは本当に痩せてしまい、でも、良い意味で余計な苦労をしていない、育ちの良い人に特有な品の良さはそのままで、夫とTさんが高校~大学時代の他の友人達の話などをするのに耳を傾けながら、そうそう結婚が決まってTさんご夫妻のお宅に遊びに行った時も彼はこんな感じだった とぼんやり思い出していた。

去年食道と胃の1/3を摘出し、一旦は全快したのに定期検査でリンパへの転移が見つかった とのこと。
今は抗がん剤治療でリンパのがんをたたいているのだ と教えてくれたTさん。


明日、否、この瞬間すらも何が起こるかはわからない。
だから私達もTさんと同じようにlimited lifeなのだろうが、Tさんの方がより具体的にそのlimitが感じられる状況となっていることがたまらなくやるせない。エリザベス・キューブラー・ロスはその著書の中で人は死を目前にして初めて生について本当に真剣に考え様々なレッスンをする と語っている。それはやせ細ったTさんと笑顔で話をしながら私の心の中に言葉にならないものとして押し寄せてきたものと同等だと思う。絶好調!という日が1年のうち多分10日前後 という情けない私はそれでも命に関わる状態ではないのでただ漠然と漫然と日々を過ごしてしまうことも多いのだが、果たしてそれでいいのだろうか?私のベストは与えられたその状態で果たされているのだろうか?


Tさんは一旦退院し、また来月抗がん剤治療に取り組むのだと話してくれた。退院したら、看病で大変な奥様のねぎらいも兼ねて温泉旅行に行こうかと思うと言ってらした。どんどん出かけて、気持ちから元気になって欲しい。今度みんなで遊びましょうと約束もした。

たわいもない話を交わし、じゃあ と別れる時に夫は両手で握りこぶしを作り、ぐっと力を入れて小さなガッツポーズをしながらTさんに「頑張って」と小さな声で言った。Tさんも笑顔でポーズを返してくれた。これ以上頑張れないくらい頑張っている人に向かって、「頑張って」という言葉しか思いつかなかった私達は本当に小さな声でしかその言葉をささやけなかった。そしてTさんはやはりなんとも言えない品の良さで私達を見送ってくれた。

みんなくそじじいとくそばばあになるまで、生きていこう、Tさん。
by sur-lie | 2010-02-10 23:53 | 色々考えたりもする
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崖の上(っぷち)の暮らしもいとをかし  

by sur-lie
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